樹の鞄とシナノキ

はじめまして、樹の鞄®︎です。

樹の鞄®︎は、制作者亀井勇樹がつくる木製の鞄です。それは今から30年以上前、1990年妻への贈りものとして生まれました。

使う人の気持ちに寄り添いながら、その木でしか表すことのできない「形」にこだわり、つくり手のその時の感性でつくられる世界に一つしかない鞄です。

 

作品づくりは、長い間生きてきた木の姿を思い浮かべるところからはじまります。

鞄の材、「シナノキ」は北海道で育ち、樹齢およそ150年。

工房の傍で鞄の材になるまでゆっくり休ませます。10年近い時間を経て、いよいよ鞄づくりにと表面を削る時が来ると、シナノキは、その美しい杢目、年輪、傷跡について、自らの生い立ちを語りはじめます。

木の声に耳を傾けながら、見て、触れているうちに、インスピレーションが湧き上がり、イメージが形になっていきます。

 

見たことのない驚きのある鞄。

美しさ、楽しさに加えて、使う人が「自分だけのもの」という喜びのある鞄。

オブジェのように眺めることのできる鞄に。

 

じっくりと時間をかけ「その時」に湧き上がる感覚を、彫り、削り、磨き、塗り、、、と

丁寧に形にしながら仕上げていきます。

 

木の命が無駄にならないよう、その姿を美しく残せるよう

その木にあったデザインにすることを心掛けてつくられる鞄が

手にとってくださる皆さまの日常と一緒に、美しい時が描けるように願っています。

 

樹の鞄と木 ひとつの物語。

 

木は人の暮らしにずっと寄り添ってきました。

暑い夏、広げた枝や葉は、強い陽射しをやさしく遮り、

木の葉越しに見る太陽が美しく煌くことを教えます。

突然降り出した雨に逃げ込んだ木陰では、

葉を打つ雨音の美しさに気づかせてくれます。

 

そして木は、時間をかけて大きく育つ姿を見せることで、

自分らしくゆっくり成長していいのだ、と、語りかけてくれるのです。

しかし大地に雄々しく根を張り、一人の人間が生まれ育つより遥かに長い時間を生きてきた木も

終わりの時を迎えます。

でも、木が生きてきた時間は消えない。

 

美しい縞模様や、まるで羊の毛のように渦巻く杢目、宝石のようにキラキラ光り輝く杢目。

それは生きてきた木の足跡。

 

ひとつ、ひとつ違う時間を生きてきた物語に耳を傾けてみる。

美しい姿で残そう。

ひとつの木に、ひとつの物語。ひとつの樹の鞄。

 

樹の鞄の木 シナノキのおはなし

シナノキ 学名:Tilia Japonica    英名:Japanese lime

樹の鞄は1990年創業の当初より、日本固有種である北海道産のシナノキを使用しています。

日本ではあまり多く使われることのないシナノキですが、

ヨーロッパでは、系統の同じシナノキ属をリンデン(菩提樹)と呼び、古くから親しまれてきました。

美しい並木道や街の名称、香り高い蜂蜜の蜜源、子どもの頃から飲用するハーブティなど、

ごく自然に暮らしの中にあります。

歴史は古く、ギリシャ神話の中にも記されその神話からそして葉の形がハート型をしていることからも、シナノキは「女神の木」「愛の木」と呼ばれ、花言葉の「夫婦愛」の由来になりました。シューベルトの歌曲「リンデンバウム」にあるように、恋人たちの語らいや裁判や祝祭、結婚式など神聖な儀式をシナノキの下で行われていました。また、聖人像の彫刻材として使われるなど、人々の精神的な拠り所となって長く特別な木として親しまれています。

 

1990年、樹の鞄の第一作目は、つくり手から妻への贈り物として生まれました。

その時は何もわからず選んだ材が、現在まで続く作品作りの材「シナノキ」だったことに不思議な巡り合わせを覚えます。