「樹の鞄」は、シナノキという日本固有種の木を用いて、亀井勇樹が作る木製のハンドバッグです。
150年以上の長い時を生きてきた木の命を大切に、ひとつひとつ手作りで制作された唯一無二のデザインです。軽さや耐久性も備えつつ、使う人に寄り添う美しい形状、そして何より持つ人にとって「自分だけのもの」という喜びのある鞄になるよう、心を込めて作られています。
樹の鞄の本体には、シナノキ (Japanese linden、学名:Tilia Japonica) という日本固有種の樹木が用いられています。シナノキは白く美しい木目が特徴的で、柔らかく加工しやすいため古くから建築材や工芸品などに利用されてきました。同じシナノキ科シナノキ属のセイヨウシナノキ(Tilia×europaea)はリンデンバウムとも呼ばれ、楽器やハーブ、蜂蜜の原料としても利用されています。
樹の鞄の制作においては、北海道の原生林で育ち、樹齢150年を超えたシナノキを原木の状態で買い付け、最も美しい木目が出るように製材したものを利用しています。
製材されたシナノキの板は、八ヶ岳アトリエ内にある倉庫で10年ほどじっくりと時間をかけて落ち着かせ、鞄に適した材になるまでゆっくりと乾燥されます。
ひとつの材から生まれる鞄の個数は決まっていません。無駄が生まれないよう、それぞれの木目や節の特性を考慮して慎重に「木取り」を行います。
自然が生み出した形状からインスピレーションを得て、徹底的に無駄を出さず隅々まで使い切る「その木に合わせたデザイン」がユニークな鞄を生み出しています。
塗りは様々な技法が用いられます。その中には日本の伝統的な塗料である漆を使ったものも含まれており、生漆(きうるし)・黒漆(くろうるし)などを用いた拭き漆仕上げによって木目を生かして何重ものコーティングを施しています。
漆のほかにも、染料で染めたあとウレタン樹脂塗料によるコーティング仕上げをすることもあります。どちらの場合でも、日常生活での利用において十分な耐水性を備えますので、雨の日もご心配なくお出かけいただけます。
バリエーション豊かなデザインやカラーがあり、グラデーションやツートン、ドット柄等のデザインもございます。漆の種類や染料の組み合わせ、季節ごとの温度や湿度の違い、作り手のインスピレーションによって一点ごとにまったく異なる表情を持っています。
鞄としての強度と持ち運べる軽さの両方を追求し、ある程度の厚さを保って立体的に仕上げています。外側だけでなく、内部も細かく彫って仕上げています。
デザインによっては、その立体の表面にさらに彫刻を加えて、独特の風合いを表現しています。本体に合わせて、まったく手を加えていないデザインのものもあります。完成品の状態では、おおよそ300gから600gの重さになります。
底面には、滑り止めと軽量化のための模様彫刻が入り、見たときの驚きもお楽しみいただけます。
樹の鞄の留め具は、ダイヤルのように左右にひねると上下に開くという構造をしています。開閉が簡単でゆるみや外れの生じない使いやすさと、デザイン性の両方を兼ね備えています。
留め具の素材は、キンモクセイやコクタンなどの堅木の枝を中心に、その時々で入手できる材を使用しています。1990年の創業時から数えると30種類以上の多様な素材を使って色々なデザインにチャレンジしており、いくつもの試行錯誤の末に完成したものです。
ガラスビーズや螺鈿、縮み漆の細工や彫刻を施したものもあります。
樹の鞄の独特なデザインやカラーリングは、家のさまざまな場所に飾って楽しむことにも向いています。
同時に、実用品としての鞄であり、お出かけの際に持ち歩くものであることを考え、使いやすさを意識して制作されています。
手にしっくりと馴染むような曲線、手触り、握りやすい太さを意識して制作しています。また、デザイン重視の一部を除いて、ハンドル内径は腕が通しやすい太さにしています。
また、雨染みや汚れ、お洋服への色移りなどのご心配なくお使いいただけるよう、漆やコーティング剤を塗り重ねて塗膜を十分に施しています。雨の日のご使用で濡れた場合は柔らかい布などで乾拭きいただけます。汚れなど水拭きで落ちない場合は薄めた中性洗剤もご使用いただけます。
革や布製の鞄と比べると、柔軟に広がることはないため、あまり多くのものを入れることはできないかもしれません。
お出かけやよそ行きの際に、普段持ち歩く必要なものだけを入れるコンパクトなミニバッグとしてお使いいただけます。デザインによって形状やサイズは異なります。
デザインに合わせ中も彫り上げています。シナノキの手触りや香り、味わいを開けた時に感じていただけるよう、基本は彫り跡を残しています。中に入れるものに傷がつかないよう滑らかになるまで磨いて仕上げます。
仕切りのないシンプルな構造で、中身が見やすく取り出しやすくなっています。内側には、制作者のサイン、創業から続くシリアルナンバーが刻まれています。
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